- 1. 朝起きはすべての基本
- 2. 挨拶は人を動かす
- 3. よい結果は、準備次第
- 4. 一日、一回でよい
- 5. 手紙はすぐに書け
- 6. 出足を早く、引き足を早く
- 7. 人を感動させる話し方
- 8. 喜んで支払えば、お金は...
- 9. 即断即決の仕事法
- 10. 物の見方を変えるユーモア
- 11. 掃除は、最も簡単な修行法
- 12. エイッと明朗な心に切り替...
- 13. 職業が天職になっているか
- 14. 本気なら言葉に出して言う
- 15. 徹底的に見る
- 16. 「後始末」の習慣は世界を...
- 17. 日記で自分を成長させる
- 18. 労働でなく喜働でなければ...
- 19. 質素な生活は視野を広げ...
- 20. 理屈抜きに実験する
- 21. 事が済んだ後の心得
- 22. 心に空所を持つ
- 23. かけがえのない一瞬として...
- 24. 人を変えるよりも自分を改...
- 25. 思いやりが人の心を動かす
- 26. 妥協なき愛で叱る
- 27. 心の底から聴く
- 28. 人間、謙虚が第一
- 29. どんなことでも命がけでやれ
- 30. 姿勢を正せば、心境も正さ...
- 31. 洗面・入浴にも人柄が現れ...
- 32. 感謝の心なくして健康はない
- 33. 男は機関車のように生きよ
- 34. 女はゴムマリのように生きよ
- 35. 泣きたいときには泣け
- 36. 雨を喜ぶ
- 37. 大自然の立場に立つ
- 38. 教えは天地に満ちている
- 39. 気づいたらすぐする
- 40. 自分の根源は太陽にある
- 41. 断固たる決心が道を開く
- 42. 拝む形の大切さ
雨が降ったといっては嘆き、
寒いといっては不平不満。
夏の暑さも気に入らない。
いったいどうであればいいのか。
不満がいつしか習慣になっている人が多い。
こんな習慣は早くやめた方がよい。
あいにく前日から降りしきる雨が激しさを増し、朝から土砂降りの悪天候となった。講演会の始まる午後1時近くになっても雨脚はいっこう衰えず、人の集まる気配もなかった。
その豪雨のさなか、定刻15分前に、敏雄は雨合羽にゴム長靴の出で立ちで、会場に到着した。
「この雨の中では大変でしたね」
玄関に出迎えた係が、頭を下げた。
「いや、いい雨ですね。凄まじいとは、こんな様を言うのでしょう。思いがけない詩情にありつきましたよ」
朗らかにさりげなく、しずくの垂れしきる合羽を脱ぎながら、敏雄はそう言った。昭和23年の5月、縁あって丸山敏雄が三河路を初めて訪れた時のことである。
敏雄のそうした見方は、雨に対してばかりではない。夏の日の焼け付くような酷暑には「なんと男性的な暑さであることよ」と歓迎し、凍りつくような厳しい冬の冷え込みにも「なんと引き締まった清々しさか」と、その中にいつも一体となって溶け込んだ。
世の中には、思い通りにならないことが多い。会社が気に入らなければ、辞めることもできる。商品が売れないのであれば、広告を打つ手もある。何とでもなる。
しかし、暑さ、寒さや風雨ばかりは、科学技術や文明の力をもってしても、コントロールすることはできない。人間の力を超えた自然現象を忌み嫌ったり、不満を持つことは、戦車にカマキリが向かってくるようなもの。そして、人の自然現象に対する心の持ち方や態度が、実は人間の幸福と不幸に密接に関連して、それを左右する、との着眼を敏雄は得た。そして、健康を損なう原因には、天候気候への嫌悪、不足不満、恐れが大きいことも突き止めた。
たとえば、皮膚が異常に荒れる。顔がカサカサになる。唇がひび割れる、夏のアセモ、冬のしもやけなどは、暑さ、寒さを忌み嫌っているから起きる。
では、自然現象に対して、人はどう接すればよいのか。敏雄はそれを「天候気候の倫理」として、次のように説き明かした。
- 「順応」すること。暑さ寒さも、雨も風も雪も、天来のものと受けとめ、天与のものとして喜んで和し、逆らわないこと。寒ければ暖をとり、雨の日には傘をさしコートを着ればよい。その時々の自然に素直に合わせ、対応していくことである。
- 「畏敬」すること。畏敬とは、人間わざの及ばない自然のスケールの大きさ、自然のふところの深さや広さに驚歎するとともに、そのはたらきを敬い畏れ、その偉大をたたえることをいう。
- 「感謝」すること。戦々恐々と恐れるのではなく、おだやかな心で親しみの念を抱きつつ、自然のもたらす恵みに感謝すること。