短歌
三十一文字に込められた心象風景
丸山敏雄は、いろいろな趣味、余技の中でも、とりわけ書道と短歌に力を入れていました。昭和21年3月、倫理運動の展開に先立って、短歌の全国組織「しきなみ短歌会」を発足。短歌をたしなむ人の輪を広げ、文化日本の建設に資するという強い願いとともにこれを普及しました
短歌を作るのに特別の才能はいりません。万葉集の昔から、日本人は短歌に親しんできました。
短歌を作り始めると、自己を客観的に見つめることができます。これまでの生活では見えなかったものが次々と見えてくると同時に、当たり前のように思っていた身の周りの物事が美しく輝いて見えるようになります。
「歌をつくりはじめると、自然に、いろいろの知識を得てくる。道理をわきまえてくる。人情に通じてくる。しかし、こんなことは、副産物に過ぎぬ。ほんとうに有難いと思うことは、悲しみがたちまち転じて喜びとなり、怒りはそのまま笑いとなり、憎悪は愛情に、恐怖は親愛に、渋柿が甘い甘い熟柿に変るように、人生苦のことごとくは、歌によって、そのまま愉悦歓喜の泉となる」(丸山敏雄著『作歌の書』より)
短歌によって苦難のことごとくが喜びに転じるなら、人生はどれほど豊かで潤いに満ちたものになるでしょう。それはまた、純粋倫理の実践でもあります。
昭和8年6月に短歌を学び始め、昭和26年に没するまでおよそ6,500首の歌を詠んだ敏雄。作るというより、日々呼吸をするようにうたい、願い、心の内からほとばしる三十一文字の心象風景を味わってください。