倫理の道標
丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則
12. エイッと明朗な心に切り替える
病気は、自己向上のチャンス。
肉体が故障したら、心を点検するとよい。
心を軌道修正すれば病気は快方に向かう。
大東亜戦争のさなか、国民のストレスはいやが上にも高まっていた。とくに要職に就いた人たちの精神的な緊張は、想像を絶するものがあった。
逓信省航空局長官を務めていた山田良秀は、体調が思わしくなかった。空軍の増強をめぐって、遁信省と陸海軍の間でトラブルが多発していた。板挟みとなった山田は、身も心も疲弊した。激しい衰弱、絶え間ない耳鳴り、思考の鈍麻・・・・・・。弱り果てて、医者に診てもらったが、静養する以外にないと言われた。時局柄、それもできない。困り果てた。ふと、かつて教えを受けた丸山敏雄を思い出した。
<先生はどこにおられるのだろう。もう一度指導を受けたい>
偶然にも敏雄を知る人と出会い、山田は取るものも取りあえず訪問した。中野区上高田の狭い一室で、敏雄は古典の研究に打ち込んでいた。快く招き入れられ、事情を説明した山田は、敏雄から次の事柄を諭された。
- 身辺に起きる大切なことについて、楽しんでこれを迎え、国家のために正しく解決させて頂くことを固く決心して、毛ほども急がず憂えず、問題に直面して喜んで暮らすこと。
- 過ぎ去った事柄は、何ごとにもよらず水に流すというような、さっぱりした心で暮らすこと。
- 人の不平、身に近い人の不平を思わぬこと。
- 天候について、不満を思わぬこと。
- 我が思う通りにならないことを喜ぶこと。
- 人のいうことは必ず聞くこと。
どれもみな、山田にとって合点がいく内容であった。以後ひたすら実行に努めたところ、体調はみるみる回復した。
朝起きて、雨が降っていればうっとうしい。暑ければだるい。とかく人はわがままである。肩が凝る、頭が重い、腹が減った、疲れた、眠い、クラクラする、不安だ、やる気が起きない等々。さまざまなマイナスを感じる。
身の回りのことは、決して自分の思惑通りに動いてくれるものではない。マイナスを放置してマイナスの気持ちに振り回されていては自分の価値はどんどん低下していく。
鼻風邪だと甘く見ていると、やがて悪化して高熱を出したりすることがある。ゾクッとしたら、用心しなくてはいけない。体に冷えがよくないように、心にも冷えは禁物。人間関係が冷え冷えとしてくると、心は柔軟さを失う。風邪が万病の元なら、心の冷えも万病の元である。心が体に及ぼす影響は実に大きい。ストレスがたまれば、不平不満がつのる。そして、急ぎ心や憂い心が先に立つようになる。
それらのマイナス心をエイッと切り替えれば、きっと体調は好転する。明るく朗らかな心が、健康を創造するのだ。病気が癒えた時、災いは転じて福となる。そこには、成長した自分が存在している。
肉体の異常は精神生活上の何らかの誤りを知らせている。病気を、ただ肉体の故障として治すだけでは惜しい。