倫理の道標
丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則
31. 洗面・入浴にも人柄が現れる
見る人は見ている。
何気ない挨拶、食事の仕方、電話の応対・・・・・・。
小さなことであればあるほど、正体が現れる。
小さなことが満足にできなくて、大きなことができる人はいない。
地球は、表面の約70パーセントが水で覆われている。地球ではなく「水球」と呼ぶ方がふさわしい。新生児の体内における水の割合は約80パーセント。成人すると、約70パーセントになる。地表の水分の割合と、ほぼ一致することが神秘的だ。
46億年前、原始生物は海から誕生した。生物は、水なしには生きられない。命は水と共にある。
敏雄は、実に水を大切にした。ある日、書斎で一冊の本を読んでいた。
「かつて戦争が激しかった頃、太平洋の孤島において、何人かの若者たちが一杯の水筒の水で顔を洗い、口をすすいだ」
この記述に、涙が止まらなくなった。
「日本は古くから水の恩恵を受けている。何の喜びも持たず、当たり前と思って、長い間汲み上げ、汲み捨てていないか」
憂いを深めた。以来、より一層、大切に水を扱うようになった。起床すると、井戸、後には水道の蛇口に向かい、
「この清水をちょうだいいたします」と一礼してから洗面器に汲み入れた。
それは、単に顔を清潔にするためだけに行なわれたのではない。心の垢を落とすつもりで、目、眉、耳、口、鼻の中まで一つ一つ洗面した。そうして心を清めたのである。
「祖先に受け、自然に受け、親にいただいたこの身体、天上天下、この他に我なき我の奇しく尊き生命です」
天に向かって決意を表明し、洗面器に残った水は、草木にかけ、玄関の土間や乾ききった道に撒ききった。
著作の中で、次のようにも述べている。
「私は皆様に提唱したい。朝あさの洗面こそは、私どもが物質の恩を感謝する最初の礼式といたそうではありませんか」
昭和24、5年頃のこと、伊藤金五郎は師と仰ぐ敏雄と共に、八光農場に宿泊した。夕飯後、二人で入浴することになった。
敏雄は金五郎に向かって、
「お風呂というものは、入る前よりも入った後の方がきれいになるよう入るものですよ」
と、語ったという。
敏雄は湯を粗末にしなかったのはもちろんのこと、浴槽に手拭いをつけず、身体についた石鹸を浴槽に入れないなど、入浴の心得を遵守した。風呂から出る時は、桶を揃え、湯垢をとるなど、後始末をも徹底して行なった。
水は、人類が誕生する以前から存在し、とうとうと地球を循環している。私たちは、それを拝借しているのである。青く美しい地球に、感謝を込めて水を扱おう。そこから清い新しい一日が始まる。