倫理の道標
丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則
9. 即断即決の仕事法
ウジウジして手をつけない。
手をつけてもイヤイヤやる、ダラダラやる。
それではダメだ。今、ここで、自分がやらねば誰がやる。
いつも仕事に追われているサラリーマンがいる。月末になると、「やることが多すぎて」とぼやいている。そういう状況に追い込んだのは自分自身であることには気づいていない。
どんな仕事でも、こちらから積極的に追いかけている時は、簡単に片付き、順序よくはかどる。その上楽しい。当たり前のことが、実際にはできない人が多い。なぜできないのだろう。
丸山敏雄が、戦時中、三菱重工業の常務である原耕三を訪ねたことがあった。やがて社長にという呼び声の高かった人である。僅か10分足らずの時間を共にしただけであったが、敏雄はその仕事ぶりに目を見張った。
「書類が来るとただちにこれを左右に決裁し、手紙が来ればたちまち読み下して、即時命ずべきは命じ、求むべきは求めて、時をおかぬ。他の面会人でも、簡単なのは、途中で用を聞く。まるで『裁決流るるがごとし』とはこんな方であろう。妥協もなし、遅延もない」
敏雄は、原の部屋を訪れるたびに「高い教訓をひしひしと身につけて退いた」と述べている。原耕三こそ、敏雄自身が、日頃提唱している「気づいたらすぐする」という哲理の実践者であった。
敏雄が宗教的修行に専念していた頃、恩師によって教えられたのは、「悟ると共に働かせよ」ということであった。気がついたら、少しの猶予もおかずに、すぐにしてしまえ、というのである。
恩師は、気がつきながら捨てているような場面を見ると、われ鐘のような大声でどなりつけた。
「手紙は即刻に書け、返事を明日に延ばすな。先方についたら額にされるものと思うて、念入りに書け。書いたらすぐポストに入れておけ。手紙は手に持って行け、ポケットに入れるな、二日も三日も忘れるぞ」
最も力をそそいだ実践は、朝起きであった。目が覚めたらその瞬間、サッと起きる。床を蹴って、サッと起き上がる。それから時計を見る。
「人の目というものは必要な時に覚めるものだ。それで起きようとすればいつでも起きられるものだ、時計よりか人の目の方が正確だ・・・・・・」
仕事を追う生活に切り替えるには、朝目が覚めたら、すぐ起きる習慣を身につけることだ。
朝起きを続けていると、さまざまなことが、その時々に片づけられていく。気がついたその瞬間、その時こそ、その仕事を成し遂げるのに一番よい時、最良のコンディションにあることが、わかるようになる。
いつも仕事に追われている人は、「今日はだめだ、今日は都合が悪い」と、できるだけ延ばそうとする。こういう人は、決まって朝、布団の中でぐずぐずしている。敏雄はこう述べている。
「あの事をしようと思ったら、すぐする。あの人を訪ねようと考えついた人は、すぐ訪ねる。あれは止めようと気づいたことは、すぐ止める。それで、頭の中にもやもやと残るものがない、し残してまだできぬ仕事がない、気にかかって忘れられぬ人がなくなる。常に明朗である」
まず、目が覚めたらすぐ起きることから取り組んでいこう。仕事を追う人だけが人生の勝利者となれる。