丸山敏雄ウェブー倫理運動の創始者 その生涯と業績

倫理の道標

丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則

36. 雨を喜ぶ

雨が降ったといっては嘆き、寒いといっては不平不満。

夏の暑さも気に入らない。いったいどうであればいいのか。

不満がいつしか習慣になっている人が多い。

こんな習慣は早くやめた方がよい。

あいにく前日から降りしきる雨が激しさを増し、朝から土砂降りの悪天候となった。講演会の始まる午後1時近くになっても雨脚はいっこう衰えず、人の集まる気配もなかった。
その豪雨のさなか、定刻15分前に、敏雄は雨合羽にゴム長靴の出で立ちで、会場に到着した。
「この雨の中では大変でしたね」
玄関に出迎えた係が、頭を下げた。
「いや、いい雨ですね。凄まじいとは、こんな様を言うのでしょう。思いがけない詩情にありつきましたよ」
朗らかにさりげなく、しずくの垂れしきる合羽を脱ぎながら、敏雄はそう言った。昭和23年の5月、縁あって丸山敏雄が三河路を初めて訪れた時のことである。
敏雄のそうした見方は、雨に対してばかりではない。夏の日の焼け付くような酷暑には「なんと男性的な暑さであることよ」と歓迎し、凍りつくような厳しい冬の冷え込みにも「なんと引き締まった清々しさか」と、その中にいつも一体となって溶け込んだ。

世の中には、思い通りにならないことが多い。会社が気に入らなければ、辞めることもできる。商品が売れないのであれば、広告を打つ手もある。何とでもなる。
しかし、暑さ、寒さや風雨ばかりは、科学技術や文明の力をもってしても、コントロールすることはできない。人間の力を超えた自然現象を忌み嫌ったり、不満を持つことは、戦車にカマキリが向かってくるようなもの。そして、人の自然現象に対する心の持ち方や態度が、実は人間の幸福と不幸に密接に関連して、それを左右する、との着眼を敏雄は得た。そして、健康を損なう原因には、天候気候への嫌悪、不足不満、恐れが大きいことも突き止めた。
たとえば、皮膚が異常に荒れる。顔がカサカサになる。唇がひび割れる、夏のアセモ、冬のしもやけなどは、暑さ、寒さを忌み嫌っているから起きる。
では、自然現象に対して、人はどう接すればよいのか。敏雄はそれを「天候気候の倫理」として、次のように説き明かした。

  1. 「順応」すること。暑さ寒さも、雨も風も雪も、天来のものと受けとめ、天与のものとして喜んで和し、逆らわないこと。寒ければ暖をとり、雨の日には傘をさしコートを着ればよい。その時々の自然に素直に合わせ、対応していくことである。
  2. 「畏敬」すること。畏敬とは、人間わざの及ばない自然のスケールの大きさ、自然のふところの深さや広さに驚歎するとともに、そのはたらきを敬い畏れ、その偉大をたたえることをいう。
  3. 「感謝」すること。戦々恐々と恐れるのではなく、おだやかな心で親しみの念を抱きつつ、自然のもたらす恵みに感謝すること。