丸山敏雄ウェブー倫理運動の創始者 その生涯と業績

倫理の道標

丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則

17. 日記で自分を成長させる

日記は、自らの記録である。

反省ばかりでなく、よかったこと、褒められたことも記しておきたい。

来し方を綴った自分史は、未来への指針になる。

丸山敏雄は、一貫して物事をやり通すことの大切さを人に説いた。もちろん、自らも実践した。専門である古代史の研究はもとより、余技とした書道、短歌、謡曲、絵画など、いずれも始めた以上は終始一貫、徹底してやり続けた。日記もまた、幼い頃から始め、人生を終えるその日まで続けたものの一つであった。
一定したことを一定の時にきっちりと行なう。これは生活に節を入れる。緩んだ生活にしまりをつけて、全生活を引き締める、活を入れる、生命を揺すぶり立てることになる、と敏雄は説いた。彼の生活そのものがまさにそうであった。日記をつけることは、生命のほとばしりであり、自らへの激励となった。
喜びを、悲しみを、憤りを、敏雄は隠さず日記に刻み付けている。その内容も変化に富み、時には詳細に、時には簡潔に、スケッチや家の間取り、似顔絵なども描かれ、記録することの楽しさが伝わってくる。あくまで、日記は他人に見せるためのものではなく、自分との対話である。内面に向き合い、自らの位置を確認し、叱咤しったし、鼓舞するのである。
書くことは、漠然としたことをはっきりさせる効果がある。とるべき行動が自ずから鮮明になる。
敏雄は、敗戦から間もない昭和20年9月3日の日記に、こう記している。

「『夫婦道』起稿。この平和と世界文化建設の大任に入る」

さりげない一行である。だが、この一行こそは戦後の食うや食わずで、生きていくことに精一杯だった時、未来を見つめ、人間生活の根本を明らかにする高らかな宣言だった。戦後日本に新しい道義を打ち立てる生活改善運動が始まったのである。
人生は決して平坦ではない。だからこそ日記は自らを勇気づけるものでありたいと、敏雄は言う。
彼は愛弟子に、日記のつけ方についてこう諭している。

「反省して悪かった点を書くのもよいが、今日一日どのようによいことがあったか、を記録しておくとよい」

人は誰でも人に褒められれば嬉しい。それを記録しておけば、励みにもなり、張りも出てくる。憂鬱は失敗の元、明朗は成功の元である。欠点を出さないようにという「短所矯正主義」より、長所を朗らかにどんどん伸ばしていく「長所伸展主義」が人の器をより広げる。
書くことで、いよいよ自らの長所が鮮明になり自信が深まる。日記の大きな効用である。しかし、続けなくてはダメである。日記は、人生に活を入れ、美しい節目を作る。継続は力となる。