丸山敏雄ウェブー倫理運動の創始者 その生涯と業績

倫理の道標

丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則

38. 教えは天地に満ちている

賢者は愚者からも学ぶが、愚者は賢者からさえも学ばない。

学ぶべきことは、身の周りにいくらでもある。

見渡せば、ありとあらゆるものが、何かを教えている。

蚊や蝿、ゴキブリを好きな人はまずいない。ネズミはまるで人類の敵のごとく見なされ、退治される。
しかし、逆にそれらの生物からみれば、最も自己中心的で身勝手で恐ろしいのが、人間である。だが、人間の中にも、寛大な紳士たちがいる。『昆虫記』のファーブル、『動物記』のシートンなどは、その例である。丸山敏雄も、またそのような一人であった。
敏雄に、『倫理かるた』という、一風変わった著作がある。その中に、「蚊も蝿も家族のうち」という一句がある。その解説がまた面白い。

蚊は、嫌う人に集まって刺す。蝿は、いやがる人にたかって、うるさがらせる。蚊も蝿も同じ家族だ、と思って嫌わないと、減っていく。防虫剤より、効果てきめんである。ネズミも、ゴキブリも、愛情を持つと、害をせぬ。次第に減っていくものである。

こうした見方は、どこから生まれてきたのだろうか。
敏雄と最も親しく交流した一人に、鳥居武二という人がいた。ある時、敏雄の家を訪ねると、裏庭の畑へ案内された。そこには、暖かい陽射しをいっぱいに受けて、ナスやキュウリやカボチャが生き生きと育っていた。それらの下に敷かれてあるモミガラの中を、かわいい子ネズミやその親ネズミが出たり入ったりして、戯れている。敏雄は、指さして微笑みながら語った。
「こうして毎日来ては、私にいろいろなことを教えてくれるのです。動物といっても、単なる動物の生活でなく、人と深い関わりをもって生きていることが、よくわかります。」
小動物の動きを捉えて、「教えられる」という見方は、極めてユニークそのもの。敏雄の独壇場ともいえる考え方と生活であった。
日記や残されたメモ類には、どんな時に「教えられた」と感じたのかが、記されている。

  • 天井裏にネズミ出で走り、押入れの中をかむ等、騒ぎまわる
  • 帽子、火鉢の中に落ちて焼ける
  • 定期券を紛失する
  • カボチャに雄花がつかないこと
  • 東天礼拝の前をイタチがよぎる

別段どうということはない、些細な動きからも、敏雄は敏感に何かを察知し、そのつど天の意を直観して、進むべき道の指針とした。常に思考し、何かを求める態度が、ふとした機縁に触れて、ヒントをつかむのである。 敏雄の教えのエッセンスを集めた『万人幸福の栞』には「万象我師」という一節に、次のようにある。

人の世のすべては、自分の鏡であり、草木も、鳥獣も、自然の動きも皆、わが鏡であることが判ってくる。作物も、家畜も、わが心の生活を変えれば、その通りに変わってゆく。それだけではない。私を取りまく大自然は、求めれば、何事でも教えてくれないものはない、無上のわが師である。