丸山敏雄ウェブー倫理運動の創始者 その生涯と業績

倫理の道標

丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則

30. 姿勢を正せば、心境も正される

あなどってはいけない。

形がゆがめば、中身もゆがむ。

僅かな角度の狂いは、1キロも進んだ時に大きな誤差となる。

体の構え、ことにあたる時の態度は、結果を大きく左右する。

出口の見えない不況に、つい猫背になりやすい。明治、大正生まれのお年寄りがピーンと背筋を伸ばして歩く姿を見ると、こちらも思わず背筋が伸びる。
禅寺にこもって、坐禅を組むサラリーマンやOLが増えている。
明治から大正に至る激動の時代には、「岡田式静坐法」という精神修養が広がった。はらを作るのだ、と多くの若者に流行した。要領は簡単だ。
腰骨を立てて座り、へその下三寸の丹田たんでんに力を込め、腹式呼吸をしながら目を閉じる。精神が集中すると、雑念が消え、全身にエネルギーが充ちてくる。
敏雄も若き日、この修養に励んだ。以来、一度として猫背になったり、足を投げ出したりしたことはなかった。
腰骨を立てて座る姿は、いついかなる時も美しかった。しかも全身はリラックスしていて、どこにも力みが入らないせいか、周囲に緊張感を与えることもなかった。
写真家の五藤義幹は、敏雄の姿をこう語った。

市川の間に座する敏雄

敏雄と対峙するときは、誰もが身の引き締まる思いがしたという

「撮影中にいつも感じていたことは、いかなる場所、いかなる場合でも、姿勢に寸分の崩れもなかったということです。一般の人物写真のように、姿勢を直したり注意をしたりする必要が毛頭ありませんでした」
歩く姿も見事だった。前方に目を向け、背筋が伸び、腹部に重心が落ちて、堂々と歩いた。
書道を習いに来る人には、一筆ごとに姿勢を点検した。
「上手に書くために習うのではありません。字に表れた自分を磨くことにあるのですよ」
腰骨を立てて背筋を伸ばすと、気力がみなぎり、心構えが整う。雑念が消えて筆をとれば、整った心境がそのままに表れて、よい字が書ける。敏雄はそう確信していた。
あともう一息なのに、なかなか企画書が完成しない。あの問題はどうしたらいいのか・・・・・・。身をこごめて猫背になって考えても、暗い気持になるばかり。気兼ねして、顔はますます下を向いていく。こんなはずではなかった・・・・・・。
そんな時は、戸外に出て猫背をのばして大きく深呼吸し、腰骨を立てて胸を張り、大空を仰ぎながら闊歩(かっぽ)するとよい。あらゆる方向から、問題解決のヒントが湧いてくる。思いもかけない名案が浮んでくる。
職場において机に向かう時、家庭での食事の時など、一呼吸おいて姿勢を正してみよう。仕事や家事に追われるのではなく、自分から積極的に追いかけるのだという主体性を持つようにしたい。