丸山敏雄ウェブー倫理運動の創始者 その生涯と業績

倫理の道標

丸山敏雄の発見した幸せになる生活法則

14. 本気なら言葉に出して言う

口から出た言葉は、現実化していく。

口先ではなく、心情のこもった言葉を遣っているだろうか。

言葉を軽視してはいけない。

ある時、ある人が、友人に対する非礼に翻然と気づき、心の中で深く詫びた。
そして、そんな心の経緯を丸山敏雄に話した。すると、こう指摘された。
「悪かった、とどんなに反省しても、それだけでは本物ではない。その思いを“口から声に”発することが大事なのです」
そこで、本気になって「すみませんでした」と、改めて言葉に出して詫び、心から頭も下げた。すると、涙がボロボロあふれて止まらなくなり、何とも清々しい気分になって、すっきりした。
この場合、「声に出す」ことに、どんな意義があるのか。わが国には古来、言霊の思想がある。言葉には霊力が宿り、声として発せられると、その内容が実現すると考えられた。
言葉が人を動かし、自然を動かし、雨を降らせ、風を吹かせた。祝詞や祓詞、読経などの持つ意味も、ここにある。
すなわち、朗らかな、喜びに満ちた言葉を多く用いていると、境遇はそれにふさわしい、喜びに包まれたものとなる。暗く、絶望的な言葉を多く口にしていると、事実、悲しんだ通りの事態に陥ってしまう。
願いや目標を大宇宙に宣言するつもりで声に発し、心のこもった言葉を唱えていると、言葉に秘められた威力が周囲を動かし、物事は成就する。言葉は、魂の息吹であり、生命の発動したもので、生き物のような働きをする、と信じられてきた。

講演中の笑顔

講演中の笑顔をとらえた。

広島高等師範学校で共に机を並べた学友の大内覚之助は、敏雄について最も強く印象に残った思い出をこう語る。
「丸山敏雄兄は、『ありがとう』と『すまぬ』という二つの言葉を実によく用いた人でした。言葉というものは、それがどんなに美しいものであれ、丁寧な語であっても、用いられる時に真情がこもっているか否か、が重要です。そのことは、語調や表情に自ずと表れるものです。丸山兄から『ありがとう』と礼を言われると、やたらに嬉しくなり、『すまぬ』と言って頼まれると、何としてでも・・・・・・と思うのでした。丸山兄の言葉には、人に感激を与え、人を感動させる響きがこもっていたのでした」
敏雄は若き日から、入魂の言葉を発する人だった、という証言である。声や言葉には、人柄が正直に現れる。
「声の澄みきった人、はっきりした人、言葉の朗らかな人は、健康であり、純情であります。ささやき、つぶやき、こそこそ話は、真人間の言葉ではありません。言葉を明瞭にする習慣だけは、どこの家庭でも是非ぜひつけていただきたい。これこそ、万人が幸福になることであり、民族が栄えるもとになるからであります」
著作の中で、敏雄はこう述べている。
「思ったことは素直に言う。思っても言わなければ相手には通じない。それは感謝の時に限らない。どんな場合でも本音を隠して、言葉に出さなければ誠意に欠ける。表現には十分気をつけなければいけないが、何事もあっさりと明るく口に出せる素直さがほしい」